「灯台のある岬をめぐる」駅にて(マリーノ超特急)/角田寿星
は馬を撫でる。ソルはよく笑う。
旅人たちは重たい水のカーテンをものともせず、馬をながめた
り、旅の守りに四つ葉の草を探している。旅人たちの北からの
世間話は、いつも南へ流れていって、還ってくることはない。
ぼくらはよく笑う。
連綿とつづく数字のような雨のカーテン。ぼくらの頬に、ぼく
らの肩に。発車の時刻が近づいてくる。ぼくらと旅人たちは、
慣れてしまった別れのことばを繰りかえす。仮面をかぶるよう
に、外套を羽織るように。
いつかマリーノ超特急の旅人たちに混ざって、灯台守りの交替
要員が北から到着するだろう。ぼくはアサギともソルとも別れ
て、南回りの海洋特急に乗るだろう。いつまでも灯台周辺に重
たくかかる、水のカーテンとも別れて、久しぶりにあおぐ強い
陽射しと海風に、目をほそめて。
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