ピンクの雨が降る部屋で/ユメミ リル
鍵が見つからないと云って
出かけたのは午後三時
アップルパイの甘さに
憂鬱を重ねて
シナモンの匂いが広がる
目に映るのは日常の風景なのに
空っぽになったあたしは
ただ
悲しかった
猫が消えそうな路地と青い空
カスタードは優し過ぎる そう思ったら、泣けない。
空が桃色に染まって。
君を少し 想っていた。
横断歩道の白いところに鍵が落ちてて
拾っても、「食べてはダメ」と・・・
あたしは壊した
真っ黒になったドアは開かなくなった
(最初から鍵は手の中にあったのに)
君がいない
淋しさが空気に混ざって
風がしみる
心に
君がいない
ピンクの雨が降る部屋で
戻る 編 削 Point(3)