降霊/大村 浩一
失明の気配におののいて寝返り
浅川の子供の神様
壊れた椅子、渇きの海
アルカディアは遥か 夏
ドアはひとりでに開いては閉じ
その度に透明なミイラが一人二人
僕が呼び寄せたものが戸外に
なかにひときわ愛したひとり
僕が呼び寄せたものが戸内に
なかにひときわ憎んだひとり
生きていたっていいじゃないか
ひとりでに鳴りだす音叉
また間違えてしまった名前、
日本橋、人形町、水天宮、押上、
怯えて走りだす裸足のひとたち
鳴らしていたのは僕だったのかもしれないな
君も年老いてしまうのかな 分からない
君が英文で綴ってみせる、
思い出をディスクに焼こう
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