降霊/大村 浩一
誰かが夜中にノックした
コツンと一度きりノックした
ドアの後ろからそっと覗くと
蛍光灯の通路が白く乾いている
あるいは秘めごとの嫌がらせに
甲虫が当たっただけかもしれない
ベトナムの木の暖簾がゆれる
かすかなさざ波が
日の沈んだほうへ流れていく
開け放てよ、そらの息道
貼りつけたメモも剥がされそう
耳障りな四発機も通る 夏
誰かが夜中にキスをした
夕立の後の床を素足で渡り
暖かい身体が寄りそうと
柔らかな唇がかすかに触れた
ベトナムの木の暖簾がゆれている
さざ波が日の沈んだほうへ
招き寄せたのはいったい誰か
目の中にみどりいろのCodeの雨
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