はなてうた/木立 悟
 




金の波間に
言葉と音が浮き沈み
混じることなく重なりつづけ
打ち寄せては打ち寄せてはうたになる


飴色の鉄が道を分け
しなるかたちを鳥はなぞる
あつさ あたたかさ
浮き足立つ
ひともとに
浮き足立つ


夜が自らの夜を知り
悲しく自身をかきむしり
光は大きな碧に変わり
土の上から夜を見つめる


水が痛みを過ぎるとき
ひとつのうたが現れて
氷を融かす言葉とともに
骨にも花にもなりながら
石にも
石にはなれないものにも
小さな舞を振りまいてゆく


波が波ではなくなり
放てが花と手に変わる
永い永い時のなかを
けしてかたちに残ることなく
骨と花をくりかえす


作る音 壊す音がまたたいて
傾きが傾きを詠うあいださえ
ほんとうのいろ
ほんとうのうた
打ち寄せる波から立ち上がり
夜の碧を過ぎてゆく







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