誰もいない箱庭/たりぽん(大理 奔)
風景だけが投げ出され
約束だけが投げ出され
虫の音だけが湿っぽく
すごした風景を箱庭に
閉じ込める
もう春、 桜は見ない
もう影、 五月雨を待たない
もう夜、 日光の鏡を見ない
誰もいない城跡の箱庭
白い絹で激しく包み
君の投げ出した言霊の符で
鎮守の森に奥深く
君は幻ではなかった
一度だって君の瞳を
星や月とは謳わなかった
一度だって君の唇を
花や風とは謳わなかった
箱庭には
誰も訪れない
秋も訪れない
訪れないことが
証明する真実を
許されない
永遠を
そう
君も僕も居ない
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