深海魚/芳賀梨花子
 
その美意識の中では美しいとされているのか
目のない魚たちは見たことのない光など求めない
もしかしたら、その静寂は、ほんのひとかけらで
そのかけらさえ理解できない未来は過去になっていく
このまま、いっそ深みにはまったまま
そんな風に漠然と
漠然と時などは過ぎて行き
あなたが、あの日、わたしに言ったように
時間と等分のしあわせを追いかけるなんて
疲れるだけなのだと
それなのに、わたしは毎日生きている
お魚屋さんの角を曲がって
その裏の細い路地、ちょっと奥まったところで
わたしは生きている
権兵衛踏切を渡って、高見順が住んでいた塀を右に曲がって
坂を上る、神社を通り抜けて、
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