*透明な残像*/かおる
夕闇へと向かう 全ての生き物が息を潜め
ゆるゆると夜への侵略を開始している瞬間
そのエアポケットのような ときのはざま
きっと羊水の記憶を刺激するのでしょうか
トクントクントクントクントクントクンと
あぁ どうしてヒグラシが鳴き始めたのか
今年最後の夏の後ろ姿はひときわ大きく
桃源郷へのきざはしを隠しているようで
あのひとからの招待状を受け取ったのは
だれ
桜貝
の
薄紅色
の
その夏
の
名残
の
斑紋が薄れていく前に
透き通る蒼に
吸い込まれてしまいたい
ガラスの靴を忘れていったはずなのに
二重写しの鼓動がひとりと半分
境界線を越えて
朧なまるみの輪郭を埋めていく
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