早春歌/芳賀梨花子
地悪。泣くなよぅ。ほら、自転車乗ろうぜ。五時まで、五時まで、五時まで遊ぼう。かごめかごめかごの中の冒険はいつも自転車で始まる。路地裏、がたがた道、大きなわんこのいるおうちは怖いね。いつも一緒、いつまでも一緒、ずっとずっと一緒だよって指切りした。
そのうち、一緒は二人じゃなくて三人になった。
三人はずっと一緒。
いつも一緒。
サイクリング車を買ってもらって、三人で西に向かって走ったね。海岸のサイクリングロードは夕日が沈む道。このまま走っていくと、箱根のお山や丹沢の連なる峰に吸い込まれるような気がして、怖かったから私、二人の男の子の背中を、いつも必死に追っかけていた。ねぇ、ねぇ、待って
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