早春歌/芳賀梨花子
高校二年生の冬、谷川岳で幼馴染が遭難した。きっと、眠っちゃいけないと眠っちゃいけないと思っていただろう。その日の朝刊で捜索が打ち切られたことを知った。
初恋の人は学校を辞めて谷川岳に彼を探しに行った。私は止められなかった。止めようと思わなかった。一緒に行きたかったけど、一緒に行けなかった。だから現国の授業のとき泣いた。世界史のときも数?のときも、化学式を覚えるときも泣いていた。もう、ノートをとってあげなくってもいいんだ。
お昼休みに購買で菓子パンとイチゴミルクを買っているときも、彼は彼を探しているんだ。
彼は雪の中で眠っているんだ。彼は雪の中で眠っている彼を探しているんだ。
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