女体についてのオマージュ/芳賀梨花子
 
わたしの身体は三日月の野原です
このなだらかなカーブは
どのみち受け入れるための
情報を得る手段であり
触角のようなものです
屹立と振動が描く
幾重にも連なる波状のはしっこを
数千億もある毛穴を見開いて
探しているのです
三日月はやがて満ちて
野原にはやがて風が吹いて
その葉脈は潤い
朝露のような初々しい歓喜に
男は狂うのです
知ってはおりました
知ってはおりましたが
ここまで男を
深く愛したことはないので
わたしのひとつしかない瞳孔は
涙を流しながら
死と等しく開いております
覗き込めばそれは踊っております
女というものはそういうものなのです
たとえ三日月を鷲づかみされても
最後の一滴まで搾り出されても
枯れたりはいたしません
女というものはそういうものなのですから

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