ゆきの花/
たちばなまこと
いように
普遍になりつつある朝にも 一点はある
午前5時台の蝉しぐれ
上がらない血圧を ひきずって胸を開け放てば
ゆきの花野が広がっていて
私は静かに寝ころんで
果てのない空の向こうを目指す 命の終わりを見届ける
透明をかたどる明暗が 時々見え隠れするだけの
例えばバルコニーに落ちた蝉の 終わり
私は曖昧な目覚めの中で
ゆきの花のメタルフォンのような吐息を
つむいで
小指に結わえて
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