生まれいずるすべてへ/伊藤洋
 
電線の五線譜に音を入れ
夜三時に水平線を目指すオオムラサキ

世界を支えるピアノ線がゆっくりと緩む

深海にさく桜
魚達は星を夢見ている

海が静かにひいて
地軸がわずかにきしむ

東の空にオレンジがにじむ

飛行機が空に十字架をきり
世界中の楽器が、響き始める

風と波が共鳴し
音楽にあわせて乱舞するオオムラサキ

生まれいずるすべてのために
いずれ死に行くすべてのために

今日を

今日という日を捧ぐ

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