生まれいずるすべてへ/
伊藤洋
電線の五線譜に音を入れ
夜三時に水平線を目指すオオムラサキ
世界を支えるピアノ線がゆっくりと緩む
深海にさく桜
魚達は星を夢見ている
海が静かにひいて
地軸がわずかにきしむ
東の空にオレンジがにじむ
飛行機が空に十字架をきり
世界中の楽器が、響き始める
風と波が共鳴し
音楽にあわせて乱舞するオオムラサキ
生まれいずるすべてのために
いずれ死に行くすべてのために
今日を
今日という日を捧ぐ
戻る
編
削
Point
(4)