お茶の色/鳴々門 零
 
影が隙間から
抜けてくるように
薄い木綿のシーツを
引っぱってきて
路上でなびかせてから
敷いて昼下がりのお茶を飲む

時を隔てたような
杭州のぬるい息づかいが
湿ったまま身体に纏(まと)わりついてくる
どうして重い荷物を運ぶのですか
肩に木刀を打ち込みながら
天秤になって水瓶をゆらしている

砂漠で溺れてしまいそうな
澱(よど)んだ水が この土地の生命といえる
お茶も 紹興酒も 彼らの笑顔まで
みんな意味があって茶色い

お寺の瓦が天に向かって
角が丸くて
睨み返しても 意味がわからない
何百年もまえ 
日本から僧侶が辿りついたように
師に出会うのだろうか
お香の煙とともに吸い込まれて
脂(やに)になるだけだ

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