夏休み/狸亭
あつい陽射しの中にいつのまにか
とうめいな光がましてきて空は青い
『ジッドの日記』新刊本の表紙の白い
色に金と黒と朱の印刷文字があざやか
世紀末から新世紀をのぞむ思想家
にじみだすインモラルのなんとわかわかしい
一〇〇年の時間をこえて読めばいまでもうれしい
新庄嘉章八十八歳翁のもえさかる刧火
一冊の書物から連想ははてもなくひろがり
ぼくは容易に前世紀を生きてしまう
全ての書を読みぬ ああ肉体は悲し
とうたった マラルメよ こころゆくばかり
本など読む時間のない このぼくの夢想は舞う
拷問からのつかのまの自由 夏の休みはあとすこし。
(押韻定型詩の試み 19)
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