渇いた雨/
恋月 ぴの
腰の曲がった老婆がひとり
大雨の中を歩いている
両手を鎖に繋がれて
重い足枷を引きずりながら
濡れるに任せ歩いている
彼女にも愛は確かにあった
独り暮らしの雨は寂しい
愛は何処へ消え去ったのか
孤独の口元は涸れ果てた過去の為にある
誰かを愛していたのか
誰かに愛されていたのか
そんな愛の残像は
耐えられぬほどにおぼろげで
横殴りの雨の中
老婆の心が歩いている
濡れるに任せる曲がった腰に
涙が重くのしかかる
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