ひひる  ゆらぎ/木立 悟
 



蒼く冷たい空のまだら
枝を揺する見えないものたち
光の幅だけ花を飛び越え
午後と夜を持つ水の上を
蝶の影が過ぎるのを見る


透明な錆が生まれるところ
風の後ろ側へとまわり込む生きもの
目を失った男の手を引き
砂浜を素足で歩く子
空には無数の手
廃船のかたわらの午後


けだもののかたちに燃え残る樹々
何かをなだめようとする火の動き
翼を持つものが空を埋め
子は静かに指をひらき
堕ちてゆくものの色を数える
羽を呼吸した内の幾人かは
降る夜に乗り飛び去ってゆく


見えない光の源があり
本当の姿の影をつくる
土の上  水の上
繰り返されることのない踊り
砂浜へとつづく道のまんなかに
なめらかなゆらぎが舞っていて
光の源に手をかざし
指の間の午後をほどこうと微笑んでいる







戻る   Point(1)