ウミガメ/芳賀梨花子
 
チャン
と亀ちゃんは言う

お店でいやな思いしたり
彼から電話があったりして
気分がいらいらしてたりすると
石段で待ってる亀ちゃんを無視して
砂浜へ下りていった
亀ちゃんは
そんな意地悪な私の後を
やっぱり無言で歩く
波打ち際に残る
私の足跡の上きっちりと
二人の足跡は
いつも一人の足跡で
そのうち亀ちゃんと
私の波長がいっしょになってくると
自然に涙が出てくる
だから亀ちゃんに走りよって
キスをして
そして、唇が離れると
バイバイ、ボクノウミガメチャン
と亀ちゃんは
いつものように言う

海にカツオノエボシが
うようよし始めるころ
お店に集ま
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