雨が怖い/狸亭
 
雨が好きという小説を読んだことがある
雨が嫌いというのはあまり聞いたことがない
やらずの雨は都都逸にもあり乙なものである
城ヶ島の磯にふるなみだ雨はせつない  

雨よふれふれも悩みをながすまでの雨だし
日本の雨はみなしみじみとした情愛ばかり
広島の上空にあの日きのこ雲がわきだし
老いた白髪頭までが黒い色にそめあがり

あれから半世紀の間に世界にふる雨は
大地から海から天へむかってふる雨は
はげしく循環し怒号しさけびやさしさをうしなった

ロンドンの古い町並みにふるものうい雨も
亜熱帯にむらがる島にふる滝のような雨も
もはや恵みをあたえないこわい雨になった。

 (押韻定型詩の試み 18)



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