夜を抱きしめる/なつ
 
羽音だと思ってたら
薄布のカーテンをふるわせて
飛びたいよう、と
窓が
泣いていた

わたしがあんまり
窓の目で
空を見るから

ガラスの表情は
いつのまにか、曇って
月の形に腫れた傷を
隠すように
うつむいている


願いを抱いた瞬間
みんな生き物なんだね

染みがついた
夏のカーテンは
わたしの枕と
同じにおいがした


ねえ、
泣きつかれたら
今夜は
ふたりぶんの星屑を探そうか

枠に寄りそって
そっと、撫でたら
窓は
すこしだけ微笑った気がした
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