『飛行少年、S、の聖夜 1996』/川村 透
第九、を
歌おう
裏声も雪のかたさにかすれ
鈴の音も惑う聖夜に
深く沈む想いと「僕」と二人きり
肩を並べて雪にとけて
それから
それから
大人達のむずかしい話にあいづちを打てなくても
「飛行少年」を読みながら
裏声で高く小さく
第九、を
歌おう
窓硝子に曇る追憶
ひとつひとつにゆっくりと
あいづちを打ちながら
もう
藍色の「僕」と
肩を並べて頬に
硝子越しの雪紅が頬染めて
パーティが
始まるまで待てなくて
待てなくて
プラスチックのジョイ
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