ブリキのひびき/石川和広
消えたカラダを
拾い集めに
旅にでる
ゴミあさりして
錆びた鉄板を胴とすると
腹からピューピュースキマ風
コンクリートの下から
生えている草を指にすると
たよりなくふにゃりとする
足は泥で固めてつくった
少しずつ早く歩けるように
なった
ときどき水をかけてやらねば
干からびてポロポロ
はがれる
私はふるえないトルソー
写真ではわからない
ブリキのにんげん
錆びてまがった
ホムンクルス
私は
本当の笑いを
なくした
いつからか
腹から笑えなくなった
腹がないからだ
その場しのぎの微笑みは
うすぐらい通りに
消えて
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