粒の日のうた/木立 悟
原をわたる風は沈み
日陰はまるく動かなくなる
中庭のまんなかでひとりの子が
空をあおいで立ちつくしている
風は草に降りた鳥たちに
気づかれることなくすぎてゆく
雲を焦がして月は現われ
破片の川をゆうるり曲がる
水の針は突くことなく触れ
肌の波紋を見つめずに触れ
夕べの国の蜘蛛の巣と窓
雨とともに去るにおい
降りそそぐまま 降りそそぐまま
季節の狭間を浴びつづける子
季節に重なり 歩みゆく子
大きな水の粒の道を
切られては増える羽をひろげて
どこまでも淡く遠去かる
風を分けるふたつの手のひら
夜の流れのままの髪
とり囲む日々の黄金に
幾度も幾度も訪れる声
ぬくもりを逃れ
谷底を歩み
空の高みを流れる火を知る
風の指は細くなり
雨のように触れてゆく
花と屋根から光はこぼれ
道はよく似た音に満ちる
静かに渇いた音に満ちる
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