手紙/
黒田人柱
一冊の絵本のような生涯
浮遊するひとかけらの海
あれは君なんだろうか
思想のない森と夜の魚
そんな絵本だとしたら
月がちょうど半分 あとは少しの湿度
そんな海だとしたなら!
(わたくしは悲しい魚です ひび割れた月です)
幾億年も吹き抜けてきた光が
今はここにある
かつて生命はその上を流されていった
刹那と恒久とがめまぐるしく細胞分裂しながら
頭の上から降り注いでいる
(わたくしは悲しい魚です ひび割れた月です)
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