遺言/なるせ
母さん。
初めてぼくが笑ったのは、いつですか。
母さん。
ぼくに初めて友達が出来た日を、覚えてますか。
初めてぼくが熱を出した時、大変だったでしょう。
母さんのお粥は、ほんの少し、固めでした。
母さん。
初めて背負ったランドセルが泥で汚れて、ぼくが泣きながら帰ったこと、覚えてますか。
あの頃ぼくはいつも泣いてあなたに甘えてばかりいましたね。
運動会のリレーで一等を獲れなかった時も、泣きました。
風邪で遠足に行けなかった時も。
卒業式でも、泣きました。
そんなとき、いつも微笑んでいてくれたのはあなたでした。
母さん。
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