ハマナスになる/殿岡秀秋
にたどりつきたい。新幹線の駅を降りて、タクシーで海岸に向かう。夕暮れの海に日が溶けていく。私は人気のない海岸で裸になって沐浴する。ひび割れた皮膚に海水がしみる。それから砂浜に横たわる。翌朝、すでにからだは砂地に根を張り、枝は伸びている。ハマナスの花が咲いたときに私の意識は消える。もう蕾は柔らかくなっている。あなたはきっとこの北の海辺にくる。そしてハマナスの花をもぎとる。痛いという声がしてあなたは辺りを見回す。そして風か、とつぶやく。その光景が私の残りかすかな意識に浮かぶ。
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