ハマナスになる/殿岡秀秋
 
目覚めたら私の腕や脚の皮膚が黄緑色になり、固くなって、ところどころささくれ立っている。私は足や手が植物の枝になっていく気がした。柔らかなたわみのある腹や乳房は幹になり、口紅をしたままの唇が花か果実になるのだろうか。わたしはハンドバックとショールと帽子をもって出かけた。駅に着くと、北へ行くといいと胸のあたりでささやく声がする。自分の中に別の意志が生まれているみたいだ。私は北国の海岸に近い駅の切符を買う。新幹線に乗っている間中、帽子を深くかぶり、ショールを高くまいて顔を他人に見られないようにした。脚と腕だけでなく、顔も上半身も固くなっていく。植物は表皮が固く、中身が柔らかい。骨が芯をなくす前に海辺にた
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