夜の人形/AKiHiCo
 
自分を売る少女が
ドレスを脱ぎ暗い部屋で
見知らぬ男に奉仕します
笑顔で優しい口調で喋ります
心を捨て去って

時間に追われ窮屈だと
小さな暗がりで思うけれど
口にしてはいけません
何にもならないから黙って人形に
幾ら嫌な臭いがしても
笑顔で相手をします
私達はこうして生活しています
夜を眺めながら更けるのを

橙の光に浮かび上がる体を
見知らぬ男がなぞります
心地よい事ではありませんが
笑顔でその瞬間だけ人形になります

こんな生活も長く続けてきました
心を痛めるような暴言を吐かれても
笑顔で可愛い仕草で相手をしてきました
そんな偽者の自分を捨て去ろうと
今いる場所を去ろうと決めました
その先に何が待ち構えているかは判りません

ただ
もう人形になるのに疲れただけです
見えない糸を自ら断ち切ろうと
そう決めたのです――

戻る   Point(4)