世界の終わり/AKiHiCo
世界の終わりが見えたあの日
僕は産まれたのだと
身体のどこかで誰かが囁く
液体の中で呼吸を始めたのだと
瞼の裏で透明が交錯する
あの星たちは終わりを見てきたのかと
ビロードを拡げた空を眺め思う
幾つもの「さようなら」の涙を溜めた池に
映るもう一つの空に何を問えばいい?
誰もいない世界に僕がいる
風が吹き荒ぶ壊れたコンクリートの建物を
掻き分けながら前へ進む
世界に終わり等ないと証明してみせたくて
諦めの跪きで砂を握る
白く月で照らされた何かの破片
緩めれば指の間から
するすると零れ落ちてゆく
僕を映す影は長く伸びて
もう独りじゃないような錯覚に陥る
透明な液体を集めた中で
世界の終わりを見つめていた
この瞳で凝視して
なぜ僕だけが生き残るのか
全てが幻覚であればと願うけれど
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