黒い船虫/恋月 ぴの
 
夜の喧騒を引き摺るサイレンが
眠りかけの街に時折響き渡り
僕はマイドキュメントをクリックする

そこは船虫どもの巣窟
座礁したテキストの影そこかしこに
船虫どもが蠢いている

僕はそいつらをピンセットで摘んでは
眺めて見る
いろんな角度から眺めてみる

でも、結局のところ船虫は船虫
蛹にはならない
蝶にはなれない

シジミやアゲハになれば
野原を可憐に舞い
優しげな歌を歌うから
皆に受け入れられ愛されるだろうけど
船虫は船虫
マイドキュメントの闇を這いまわり
陰鬱に訳の判らない歌を歌うから
皆に忌み嫌われてしまう

特に嫌われ者が黒い船虫
虚空に
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