深海魚のふるさと/石川和広
 
とまっては
目を光らせる

僕の肌ウロコになる

ざわめく
落ちていく
ひとりであることに
目覚めると
さみしさが水面を
おおう

黙りながら
ここにいて
乞うている
身をふるわせる

いつも
大切にされている
のに
こんな時は
遺棄されている

感じてしまうのだ

その感覚
僕の故郷だ
僕は僕自身に
帰っていく
形のない水の動きに
溺れかけるのだ

彼女が帰ってきたら
ふるさとの声を
ひきずって
おかえりなさいを
いうだろうか

僕は単純に
おかえりなさいを
いうのだ

半身が
帰ってきたように
ひとりはさざ波に
なり
二人はまた
寄せてはかえす
波に泳ぐ魚になり
詩集が届いたこと
喜ぶだろう
戻る   Point(4)