深海魚のふるさと/石川和広
とまっては
目を光らせる
僕の肌ウロコになる
ざわめく
落ちていく
ひとりであることに
目覚めると
さみしさが水面を
おおう
黙りながら
ここにいて
乞うている
身をふるわせる
いつも
大切にされている
のに
こんな時は
遺棄されている
と
感じてしまうのだ
その感覚
僕の故郷だ
僕は僕自身に
帰っていく
形のない水の動きに
溺れかけるのだ
彼女が帰ってきたら
ふるさとの声を
ひきずって
おかえりなさいを
いうだろうか
僕は単純に
おかえりなさいを
いうのだ
半身が
帰ってきたように
ひとりはさざ波に
なり
二人はまた
寄せてはかえす
波に泳ぐ魚になり
詩集が届いたこと
喜ぶだろう
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