少年/チQ
ママが居ないパパが居ない
清潔なシーツほどホームシックを助長する二人部屋
ミイラ監禁眠れない呼吸音とイヤフォンから洩れる雑音と嫉妬
耐え切れず逃げた先
六台のベッドの一番窓側の向かいに聾唖の青年もまたミイラ
一日中顔赤らめたまま筆談するつかの間の平穏に夕日と和解した九月
横になり空見上げ十数年間のおさらい片想いの人数を指折り数え笑え
夜中詰所から光る視線の先に時間軸喪失した若者の群れ
やがて震度六強の揺れに驚きスリッパ履き忘れ
豪華客船の如き眺めはキラキラ
白糠から来た茶髪年上の少女に恋したらシャボンはあっという間に割れて
飛び立って行く鶴のように僕は枯草の茂みを後にした
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