小象とナイフ/りぃ
 

 片手のナイフは今日も光ってる
 昨日のサーカス団の幻影を追って
 赤いテントの中に入れども
 その中には小象が一匹残っているだけで
 
 置いていかれたのだろう
 少しだけ鼻を揺らして
 片手のナイフを隠し持つ僕の
 心の匂いが分かるのだろう
 一歩たりとも近づかない足

 何時間にらみ合っただろう
 小象は観念したように
 擦り寄ってきた
 僕はそのままナイフを落とした

 
 寂しさは共有できる
 どんな時でも。


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