幻想の王国 あるいは 詩権神授説/佐々宝砂
 
上にまき散らすんだから。

ね、あいつらを駆逐したら、
血を流しながら手に手をとって、
病める天空を飛んでゆこうよ。



6.詩権神授説

洞窟に囚われ 綺羅を剥奪され
お兄さまはもはや皇子を名乗りませぬ
片頬だけで微笑み
わたくしにお訊ねになります

妹よ 父は炙られ脂をしたたらせている
母は切り裂かれ犬に食われている
なのに おまえはまだ皇女を名乗るのか
おまえはまだ王権神授説を信じているのか

ええ お兄さま わたくしは確信しております
神は王に王冠をお授けになりました
王は裸で 王冠は茨でできてはいますが

そして 黄ばんだ花嫁衣装を着て
みにくく痩せて老いさらばえた
わたくしは常に美貌の皇女です







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