その距離/捨て彦
 
この膨大な思いでの累々と続く道沿いに立ち返るたび
また俺たちは
死んだままのデジャブを幾たびも繰り返し他愛無く
いつもの所で遊んで
親切そうに挨拶を交わしながら
これでいいんだね、なんて
全てわかった顔をして微笑んだりする。

いいさ別に。悪かないさ。

自分が立っている位置から全方位的に
人の広がりがある。
ロフトの前で人を待つ女の子の
あの位置で物を見たく思い、
君の探るような仕草の
その角度から物を考えたい。

だなんて。

目の覚めるような
田園風景の広がった
場所にある病院の廊下の窓で
俺は今日
現実感の無さが身に染みて泣けた。

こんなにも眩しい緑の中なのに
自分のその
あまりの遠慮具合に
とてもやるせなさが募って
涙も出ないのに
情けなさに泣けた。





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