八月生まれ/本木はじめ
 
八月の暦に耳を押し付ける少年いつしか海原のうへ


生い茂る真緑の原に埋もれゆく廃工場に響け恋歌


遠回りで帰る夜道に横たわる近道えらびし野うさぎの母


飛行機を追うてふもとの村の子ら京へとのぼる前ぶれとして


他県ナンバーの車が次々と行き交うここも誰かの故郷


主人公たちは風雨にさらされる読み捨てられし古本雑誌


かつて空を掴まんとして押し付けし手の型のこる廃校の窓


八月に生まれたきみを追い駆けて生まれた蝉の子孫らの声




戻る   Point(17)