さくらの想い/たりぽん(大理 奔)
記憶と想い出は
にていて、ときおり
くべつがつかなくなる
枝に懸かる
満月
いま、そこにあるのに
想い出のようで
あの 夜のように
そう凍るように美しい
ひゅうと、あしもとの風
不意に桜のしたでふるえる
「寒い」というと、みんなは
「花冷えだからね」というけど
ほんとうは花にふるえたのだ
厳しく暗い冬の中
月夜に似合う華やかさを
ただ咲かすため
育んでいた桜の樹の
その姿を想い
冬という季節のせいにして
見えないふりをした
おろかさに
ふるえが
止まらなかったのだ
あのひとの
私への想いに
気付かなかった
心に
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