ロシナンテのように/恋月 ぴの
僕は一頭のロバ
痩せこけて貧相な一頭のロバだけど
君の重い荷物を背負って
毎日運河沿いの道を
とぼとぼ歩む
僕が何か粗相をしたときは
右手に持ったサボテンで鞭のように
僕を叩いておくれ
背中にアザができるまで
おしりが赤く腫れるまで
僕が何か君の悦ぶことをしたときは
左手に持った甘い蜜のツボから
一滴の蜜を恵んでおくれ
僕はお皿を舐めまわすように
品の無い音を立てながら啜ってあげる
僕は一頭のロバ
君の言う事なら何でもしてあげる
心優しい一頭のロバ
運河沿いの道は誘惑だらけ
サンチョパンサが
何処からともなく現れて
僕の耳元で囁き悪戯に誘うけど
君の笑顔を思い浮かべ、じっと耐えぬく
僕は一頭のロバ
ロシナンテのように君を背中に乗せて
運河沿いの道を歩む
風車の前で僕はふと立ち止まり
くるくると回る羽根車
眺めているよ
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