「エルマーと竜」/yuma
昔々俺がまだ何も知らず、小さく無力だったけれど
今の俺よりも何倍も両手いっぱいにたくさんのものを抱えていたあの頃に
初めて俺のものになった絵本。
今となっては一行すらも思い出せないその本だけど、あの本が俺の礎になっていると確かに言える。
親をお世辞にも素晴らしいと言えなくなってしまったのはいつからだったか。
許せないことがいつのまにか積み重なって。
本心から親を尊敬できると言えなくなってしまったのは何時からだったか。
怒りが二人に理不尽な言葉を吐かせるようになって
いつのまにか疎遠になって会うのを避けるようになって
最後には何が許せないのかも思い出せなくなって。
それでも
それでも 俺が幼かったあの日に
俺に あの絵本を与えてくれたことは 多分 感謝している。
青い空から落ちつづける俺を 竜が そっと受け止めてくれる
そんな夢をみた。
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