サンディのこと/たもつ
るから」と
サンディの周りにはいつも
どうでもいいことが満ち溢れている
サンディが今まで吸った煙草の本数を
誰かが計算しようとした
一日に吸う本数の計算はたやすかったが
サンディの年齢を知らない
誰も知らない
本当の名前を知らないのと同様に
今まで吸った煙草の本数を知ったところで
何も語ることはできない
誰もサンディを語れはしない
ただ「煙草ばかり吸っているコ」として
それはメインストリートから何本か外れた細い路地の
突き当たりにある看板がずっこけた酒場の
脂でべたつくカウンターの
隅の一番
隅で
どうでもいいこととして
サンディもいつかはこの世からいなくなる
いなくなってもサンディといえば
皆、煙草を思い出すだろう
けれども
その銘柄を思い出すほど
誰もがサンディを愛しているわけではない
サンディは知っている
サンディを知るものもやがていなくなり
どこかの役所の冷たい電子データのみが
サンディの記憶となりつづける
たとえ誰かがそれを閲覧しても
煙草を吸っているサンディの姿を
思い出さない
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