淡い味だね/千波 一也
君は変わったね
同じことを
君が言い出す前に
キスをしよう
全てが始まったあの日を眺めながら
全ての終わりを語る唇を
塞いでしまおう
傾く船にはもはや
救いの手立てが無くて
僕はただ
僕だけを救っていたよ
何が望みだったのだろうね
映画のあとにはいつも
君を強く抱き締めて
ドリンクの氷は
音も無く溶けていた
胸によみがえる響きは
一つも無いよ
吸いかけのタバコが
鋭い無音で灰を落とす
毛布の色が今夜は妙にあたたかい
僕が眠るまでそこに居て
君は
おぼろに
そこに居て
冷蔵庫の中身はご自由に
淡い味かも知れないけれど
冷蔵庫の中身は
ご自由に
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