うみ ?/木立 悟
 



空の影
雨の輪の下
土に立つ火の槍
みずうみを照らす


雨の瞳が
水のまわりをまわり
ゆっくりと中心へ近づいてゆく
沈むより先に浮かび
浮かぶより先に沈む
瞳に映る
燃えさかる槍
白と黒の
夕暮れのなかに立つ


雲を揺らす火
戦いは遠い
おれまがり
むしりとられ
ひろがる枝
森を焼く火
夜を喚ぶ 音のない火
ひろい土の上の
小さな 小さな火


かたまり
けだもの
こだま
斜線の音がひびきわたる
砕かれつづける波のような
白い雲が空を覆う
誰もが外を見る夜に
すべてが雨になる夜に
みずうみと槍の歌だけが
蒼く蒼く取り残される






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