よらよら綴り 声の鳴りかた/エズミ
 
まで鈍行で行く、ような按配。

歌を聞きながらだと、心の支流が束ねられて大きくうねり、作業は捗ることもある。
うねりすぎて、聴き入って、溺れて流されてひとりだけでも大合唱、それもヨシ。

ラジオを聞きながら作業すると、活気づく。
語りかける声は、いいもんだ。朗読の時間がいい。諧調は低めの声で淡々と緩やかに物語が進むのを聞いていると、顎の下を撫でられる猫の気持ちがわかるような気がする。
ずっとまえNHK第一放送をたまたま聞いていたとき、不思議な魅力のあるアルトの声のアナウンサーがいた。
「あなたにだけ、秘密を教えてあげるわ」のニュアンスを漂わせながら気象情報をそっと読み上げ、しめやかな密葬の祈りの言葉のように、休日の地方都市の催事を報道していた。



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