九月になれば/tonpekep
九月になれば
誰かが語る
わたしは頷いてみる
そこに誰かはいない
誰かが語る
語り尽くせないほどたくさんの物語を
空には大きなノートが広がっている
鳥はそこに詩を描く
誰かが語る
それは空を見上げる世界中の人々をやさしくさせる
九月になれば
誰かが語る
それはとっても重いから
この星は安心して
風や海や体温を抱きしめていられる
九月になれば
誰かが語る
昔も今も未来も
誰かが語る
わたしらは夢中になって誰かを見つめる
そこに誰かはいなくても
九月になれば
語りはじめたところから
あらゆるものが実りだす
それをもぎとる
たとえばわたしの手の中に
愛の物語があったって良い
九月になれば
戻る 編 削 Point(13)