青い花/佐々宝砂
 
青い花を探しているのだと
そのひとは言いました

私も青い花を探していたことがあったのです

ずっとずっと昔 千年のそのまた千年も前のこと
白茶けた山脈を歩いていました
足元には雪がありました
咽が渇いてたまりませんでした
青い花が
青い花の象徴するなにかが
咽をうるおすだろうとは
当時の私でさえ信じられなかったのですが
私は青い花を求めました
切なく求めていました
でもそれは昔話です 千年のそのまた千年も前の

そのひとは目が見えないようでした
耳もきこえないようでした
白茶けた山脈よりも白茶けたビル街に
瞬間とどまったつむじ風のように
所在なくたたずん
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