音 ?/木立 悟
 



巨大な多翼の鳥に守られ
坂はひとつの音をたてる
雨雲のような遠さから
草と水をかき分けながら
祝福も祝祭もない羊が近づいてくる


水を閉じた森で育つ
あらゆる波紋の源の音
雲の上の偶然の青
雨のなかをはばたく金
午後の姿に生まれ落ちた
ゆるやかな ゆるやかな音


天の球の内側に
両手をひろげるもののかたちが映る
灰色の空を支え
誰のためでもなく立っている
雨の下を羊は歩み
満ち干は重なり
足元をぬらし
音は紡がれ
無数の地平線の歌をうたう






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