カルパチアからエマオまで/がらんどう
 

婦人たちが墓を見ると、墓石が墓穴の脇に転がしてあった。彼女たちが更に進み、深く掘られた墓穴の中に足を踏み入れると、冷たく湿る土の上に彼女たちが予想していたものはなかった。つまり、彼女たちはそこにイエスの死体がないことを見た(いや、死体はなかったのだから、「見なかった」と言うべきだろうか)。そのとき、彼女たちの前に黒スーツにサングラスの二人組が現れて、このことは誰にも話すなと告げたのだが、それはまた別の話。彼女らは墓から戻ると使徒たちにその一部始終を伝えた。だが、このときはまだ使徒たちは戯言として婦人たちの言うことを信じなかった。その中にただ一人嗤わぬ男がいた。ペトロであった。その夜、密かに家を
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