千鳥ならざる者の歌/
佐々宝砂
わたしたちは歌いましょう
ここにはもう
陸地はない浜もない砂もない
貝のひとかけらも落ちてはいない
浪の花とて立ちはしない
そしてわたしたちには翼もない鰭もない
この海原にもうすぐ冷たい雨がふる
その雨に打たれて濡れて
稲妻に顔を向けて
朝がくるまで
歌いながら
ただ戯れながら
ああわたしたちが鳥でないとしても
くちびるはまだ歌を紡ぐのです
−−「われら千鳥にてあらまし」(中勘助作)に寄せて−−
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