白い天井(美容院のシャンプー台)/かのこ
つま先をそろえて
腰の位置を安定させて
白い天井を見上げ
白い光に
遠近を失う。
救いがあるとすれば
かすかにある染みが。
何故、天井に
染みができるのだろう。
とても届かないように
見えるのだけれど・・・
「お湯加減、大丈夫ですか?」
頭皮に熱を浴びて
「はい」と
つま先をそろえ直す。
白い天井
空白
・
・
・
リップクリームも何も塗っていない
くちびるの色を思い出す。
今にも崩れそうな
声を思い出す。
(愛してるという言葉ではなく愛してるという声)
一瞬のうちに襲ってくる
痛み、空白、痛み、空白、痛み
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