透明人間/ピッピ
て、笑ってしまったんだ。笑えるように、
なってしまったんだ。こわい。視界の内側だけなのに、
もっと広く感じる。光の伸び、闇の縮み。何の意味も持たない、
記号の羅列。解釈しながら、こちらに向かうもの。
透明?ここには右手があって、左手があって、
それでおしまいじゃないか…。
夜がこわい、昼がこわい。いつのまにか世界はさかさまになって、
死んだものが生きていて、生きたものが死んでいる
1が0になるときの哀しみ。手に入れられるもの。
それらはなめらかに残酷だ。氷が融けて、ペプシコーラの色に
染まりつつあるコップの内側は、二度と、あの季節のかけらに
戻ることは出来ないのだろう、かわりに、鈍い色がうずまいた
透明な液体になった。
こぼれる。ねじを巻かなければ。たしかにそこにあったものに、
戻らなければ。そして、それは疲れる。見ないで。見ないで。
といって、透明人間はきえていく。ここからは、何もきこえない。
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